2018 03 02

子供の頃、夕方にとてつもなく寂しさを感じることがあった。たいてい一人で家にいる時で、勝手に空想をしてしまうのだけど、それはいつかこの世界が終わってしまうってことだった。正確には世界が終わるのではなく、自分が死んで、そのあとの世界を知ることができなくなるってことなんだけど、もう漫画の続きもテレビも観れない。大晦日になったら紅白だってやるだろうけど、僕は結果を知ることができない。僕がいなくなっても地球は回る。そんなことを考え始めたら苦しくなって心が真っ暗になった。だからなるべくこの空想の世界に入り込まないように、僕はいつもテレビをつけて、窓の外から半分だけ体をだして、この世界にちゃんと自分が存在してることを感じようとした。その頃の僕の世界はとてもちいさく、家族と親戚と友達と、学校の行き帰りとじーちゃんとばーちゃんのいる田舎の風景、そしてブラウン管の中。そんなちいさな世界が消えてなくなることがとても怖かったのだ。夕方、一人で家にいるときにこの怖い空想に憑りつかれそうになったら急いで明るい朝を思い出すようにした。学校の教室で窓を掃除している。窓に朝日があたってぴかぴか光る。友達のにぎやかな声。チャイムの音。何でもない日常がとてもありがたかった。今の僕の世界も変わらずとても小さい。もうその世界が終わることを想像しても寂しくなるなんてことはないけれど、今も自分がこの世界でちゃんと生きてると実感するのはやっぱり人と触れ合う時だ。なんでもない日常でも、たくさんの笑顔に触れていれば幸せな気分になれる。