2015 02 22

先週の金曜日のこと。身内のケータイ料金の見直しでdocomoショップについて行く。
無事、より安いプランに変更でき、そのまま一緒に夕食を食べに行く事になった。
本当に隠れた場所にある名店で名瀬からだと車で40分くらいかかる。
docomoショップは閉店時間間際に駆け込んだのでトイレに行くのを僕は我慢していた。
目的地に到着してすぐに車の陰で用をたした。暗闇のなかで小川のさらさら流れるような音と
風に揺れる竹林が、なんなら追加でカコーンと獅子おどしの音でも足しましょうか的な風情なのだ。
僕はせっかく外で用を足したのにわざわざまたお手洗いに行って手を洗うのもなんだなと辺りを見まわすと
ちょうど店の裏口の前に蛇口があった。暗くてよく見えなかったが下に何かバケツのようなものが置いてあるらしく、うんと手を伸ばしてかろうじて洗う事が出来た。そしてポケットからハンカチを取り出したときにカーンって甲高い音がしたのだ。足がバケツにぶつかったのだろうか、それにしても大きな音だなとは思ったけれど、そこでそれ以上ごそごそしてると店の人に不審がられるとさっさと店に入った。
そして翌日、ケータイが無いことに気づく。
車を飛ばす。昨晩と同じ場所に停めて、目的の蛇口に急いだ。
裏口の前を過ぎようとした瞬間、店からおばちゃんが飛び出した。
「お兄さん!!コレ、コレでしょ?!」と蛇口の横を指差した。
そこには油にまみれた僕のケータイがあった。蛇口の下にあったのは廃油を入れた四角い缶だったのだ。
「はっげーやっぱりお兄さんだったの!いやぁ、昨日の夜ね、なんかピーピーっち鳴ってるから、何かい?なんか虫かい?ち、思ったのよぉ、はっげーかわいそう」っておばちゃんは僕を憐れんでくれたのだが、そのとき僕の手のひらの油まみれのケータイが何かわなにかかって死んだ小鳥のように見えた。
「おばちゃん、ティッシュもらえる?」僕は声を絞り出した。
するとおばちゃんは油をとるならこれでしょとばかりに八つ切りにした新聞紙を渡した。
案の定、上手く拭えなかった。
「それ、もうdocomoに持ってっても治らんの?」と裏から出てきたおじちゃんの表情も辛そうだった。
僕は二人に丁寧にお礼を言って、揚げ物の香り付きケータイを持ち帰った。ついでに車のハンドルもテカテカになった。
家に帰ってキッチンペーパーやティッシュ、綿棒を駆使して丁寧に拭いてあげた。
バッテリーパックを外し、FOMAカードを抜くと、中からまた油がどろっと染みだした。
もう駄目だとは思ったが一応充電を試みた。
するとしばらくしてぶ、ぶ、ぶ、ぶぶぶぶと震え始めた。
えっ!もしかして?起動すんのか?
「立て!立つんだ!ん、、、ーー」
しかし、ぶぶぶぶ震えるだけで液晶は真っ暗のままだ。
ひっくり返った蝉が起き上がれずにじたばたしてるような姿があわれで、僕はもう一度自らの手でバッテリーを引き抜き、息の根を止めた。
こいつを介して友と交わした5年分の言葉、カメラで切り取った風景が真っ黒い塊となって消えてしまったようで悲しい。実に悲しい。
しかしいつまでも悲しんでる暇は無いので押し入れの奥に眠っていた古いガラケーを引っ張り出してSIMを差した。無事に起動。
いやぁ、こっちのほうがレトロ感があって可愛いかも!