古い友達

20代で知り合った友がいる。
お互い遠く離れた場所で生まれ育ち、上京し、卒業(中退)し、社会人になった。
職種は同じだけれどそれぞれ違う会社に勤めていて、春に配属されたのが新しくOPENするファッションビルの同じフロアだった。しかも売り場が向かい合わせだったからいやでも毎日顔を合わせる。
年はひとつだけしか違わず、すぐに打ち解け仲良くなった。ずいぶん調子のいいやつだなと思ったのが第一印象。
お互い一人暮らしだった僕と彼のアパートは偶然にも同じ目黒にあり、歩いて行けるくらい近かった。
一緒に帰ることもあったし、駅前でご飯を食べたり、お互いの部屋で飲んだり、休みの日には車や電車で海に出掛けたりもした。
こうして思い出すと本当に仲良かったんだと改めて思う。
でも大体この仕事は半年、長くても一年で職場が異動になる。僕らも同じだった。
仕事場が変わっても、家が近かったから付き合いはあったが会う機会はだんだんと少なくなっていった。
しばらくして彼が田舎に帰ると聞いたときはもう会うことはなくなるんだととても悲しくなったが、それでも自分の事で精いっぱいで忙しくしてたらいつの間にか忘れていった。
彼は生まれ故郷の四国に帰り、僕はそれから15年間東京で暮らした。
その間に二度会っている。僕が仕事で四国を回った時と彼がやはり出張で上京した時だ。
今思うとよく会えたなと思う。出会ってから30年の間、僕は何度も引っ越したし電話番号も変わってる。
気にして連絡を取ったつもりはなかったけれど、それでもちゃんとまだ繋がっているのが不思議だ。
今年も遅れて届いた年賀状の、家族と一緒に並んだ幸せそうな笑顔をみながらそんなことを思った。
また会いたい気持ちはもちろんあるが、正直会う機会はなかなかないだろう。
それでも忘れずにお互いを思う気持ちはずっと続く。
一生の中で男女を問わずたくさんの出会いがあるが、生涯を通して付き合える相手は少ない。
それはちょっと寂しい気もするが、その代り本当に大切な人ととの縁は離れていてもちゃんと続いていく。
若かった頃、「明日に向かって撃て」や「黄昏」を観て涙した理由もここにあったんだと今思い出した。