大切な時間

原宿で子供たちと待ち合わせをした。
美味しいものを食べたり、一緒に買い物を楽しんだりするつもりだったが、ただただ歩き回っただけで終わってしまった。
平日でお互い仕事や学校を終えたあとなので疲れもあったが、行き当たりばったりのデートのように、たびたび「どこに行くの?」って娘に聞かれて少々焦った。
原宿ならカフェも服屋もたくさんあるし、どこを回っても楽しいと思ったのだが、なんだか街の中で一人だけ浮いている感じで楽しめなかった。子供らが食べたいと思うもの、買いたいと思うもの、僕が食べさせたいと思うもの買ってあげたいと思うものが一致しない。僕の思惑は外れっぱなしで会えない時間を埋めるにはちょっとむずかしい場所の選択だった。
「やっぱり吉祥寺にすればよかったね」二人がいった。
いつもは家からバスで来れるから吉祥寺で会うことが多い。
吉祥寺はいつ行っても大きな変化のない街で適当ににぎやかで、それでいておだやかな田舎の空気も一緒に混ざりあっていて、僕らの歩調や気持ちを合わせるのにちょうどいいのかもしれない。子供たちもそれに気がついたみたいだ。
歩き疲れたが、都会の真ん中でふと、もうすぐ僕の背を追い越してしまいそうな息子や髪の毛が伸びて少し小さな子供の頃にもどったような気がした娘の後ろ姿をみながら僕は今の瞬間こうして一緒にいられるだけで本当に幸せで神様に感謝したんだ。