もう子供の頃のように感情を爆発させて泣くことなんてできない。
昨日はまだ早いが母の日のプレゼントにと相棒が家で料理を作り一緒に食べようと実家に持って行った。オンは基本的に車に乗るのが好きでいつもは比較的おとなしくしているのだが、昨日は暑かったせいもあってか窓から顔を飛び出させたり、車を止めるとすぐに外に出たくて運転席の僕の膝に乗っかかってきたりとなんだか騒がしい。実家でも落ち着かず暴れるので何度もトイレか?と外に連れ出すがしない。くんくんと匂いを嗅いでひっぱりまわされるだけだ。まだ子供だから仕方ないとか、ちゃんとしつけないからだとかいろいろと言われていることが頭をめぐる。母親にも「なんだか痩せて疲れているように見えるけど病気なんじゃない?」と心配され、今時メタボで痩せなきゃという人が多い中で、何でそんなことを言われるのかさっぱりわからず、相棒からもパソコンのやりすぎで電磁波にやられてるとか言われ、不健康な生活送ってるのオレ?と自問する。犬に癒されて静かにのんびり暮らしてるつもりが実はどんどん溜まったストレスが顔や体にでてきているのか。痩せるのは健康な証拠だと思っているのに。プラスの感情もマイナスの感情もエネルギーとして発散させるのが大人になったらへたくそになってしまうのだろうか。
僕は飛び掛ってくるオンを本気でねじ伏せ拳で殴りそうになったり首を羽交い絞めにして力を入れてしまいそうになる。
しかし、なんとか踏ん張ってそれをやらず、そのかわりに言ったってどうせわからないだろうと言葉の刃を突きつけた。
「オン、もうオレについてくるな。オレはもうお前なんか嫌いだからな。食い意地ばかり張って何かもらえるからついてくるんだろ?もう周作のところに帰れ」
オンは下から僕をじっと見つめている。言われてもオンは僕がトイレに行くときも寝室に行くときも必ずソファから飛び降りて僕についてくる。
今日は店にいなくてもいいように相棒が一緒に家にいて寝かせてくれている。僕が昼を食べに戻ると寄ってきたが邪魔をしないように床でまた寝始めた。いることを忘れるくらい静かだったが、しゃっくりをするようにヒクヒクとなく声が聞こえてきて、見ると寝ながら泣いている。夢をみているのかと近づいてみたら床が濡れていて、涙を流しているみたいだった。でもきっとよだれだ。