島で映画を観る

思い出の映画館に行く。26年振りだと言いたいが、本当は6年振り。前回はスターウォーズ エピソードⅡで、公開二日目だったがそのときもガラガラでびっくりした。島の映画館がロードショーで賑わうのはやっぱり難しいのだろうか。今回はロードショーではなく島興しのために企画されたもので監督と主演女優の舞台あいさつとグッズの抽選会もあった。それももちろん魅力ではあったが車で映画を観に行くその行為自体が島では新鮮で、カーステレオのボリュームを上げ、沈む夕日のおかげで見慣れた景色もなんだかロマンチックに輝いて見える。でも待ち合わせたのは男の友達で、男二人で映画を観るのも弟と一緒に行ったそのスターウォーズ以来だ。26年振りというのは季節もちょうど今ぐらい(本当は日付もちゃんと憶えている!)で高校を卒業したばかりのそれが僕にとって生まれて初めてのデートだったからで、家で一緒にビデオを観たりすることなんて出来ない時代のやはりそれはド定番のデートコースだった。僕が島を出る直前の大切な思い出となる。ちゃんとロードショーだったし、観客も大勢いたし、何よりもあの映画館独特の匂いがあった。昼間なのに怪しい暗闇に入り、大きなスクリーンと馬鹿でかい音に吸い込まれるときの感覚と一緒についてくるあの匂いだ。昨日は特別興行だったからか会場は明るく上映のときだけ暗くなったがその館内には期待感をふくらませるような妖しい雰囲気はただよってなかった。シネコンなどはその妖しさがよりゴージャスなもの(非日常的な)に変わりロードショーを観るにはぴったりなのだが、ここはロードショーよりもきっと名画座のように古くても色あせない良い作品をかけるほうがいいのではないかと思った。単館でしかできないようなドキュメンタリー映画などもいい。音響設備を充実させてフィルムコンサートなども。吉祥寺にはバウスシアターがあり、渋谷や今はないが二子玉川にもそんな魅力的な映画館があった。映画を観に行くことがささやかだけど楽しみなイベントとして日常にあったらやはり素敵なことだと思う。