前進あるのみ

白髪が目立ってきたのは30代半ばくらいだったか。
それでも耳の上のあたりの一部分だったのであんまり気にしてなかったように思う。
先日、三日間くらい髭を剃らないでいたら伸びてきた髭の半分くらいが白くなっていた。
びっくりはしたが、これも意外と嫌な気はしない。
年相応に変化していくもんだなぁと冷静に思う。
日頃「もっと大人になってください!」と言われ続けている僕としては、それに伴い中身もちゃんとした大人になれたらいいなと思う。
しかし、しょぼくれたじじいになるのは嫌だ。心はいつまでも若くいたい。そして体力も。
昔から長い距離を走るのは苦手だったが、歩きならどこまでもいける自信があった。
歩きながら音楽を聴いたり、考え事をするのが好きだ。
けさの散歩は空気が澄み爽やかで雲から射しこむ光のバランスが絶妙で最高に気持ち良かった。
犬と一緒に畑の道を歩き、帰って朝食を済ませた後、今度は子供と一緒に海へ行き砂浜を歩いた。
チビはまだ2歳4ヶ月でそれほど長い距離を歩いたことはないから彼なりに頑張って歩いたんだと思っていた。
なのに家に帰ってまたすぐに「外行くー」と手を引かれる。今度は海ではなく県道沿いをひたすら歩く。
アマンデーあたりで引き返すかと思ったら、そのまままっすぐ土浜を通り過ぎてティダムーンまで来てしまう。
さすがに帰りが心配になり、もう戻ろうと抱っこしようとしたら「あっち行くー」と手を引き、さらに前へと進んでいく。
気温も上がり、軽く汗ばみ、喉も乾いてきたが、すぐに戻るつもりだったので財布もケータイも持ってこなかった。
原ハブさんでお水だけいただこうかと道路を渡ろうとしても「なー、あっちくー」とまたひたすら前へ進む。
僕もせっかくここまで来たのだからもう少し坂を上り、喜界島を望む碧くて壮大な景色でも拝んでいこうと足を進めた。
ところが、ベンチに座って景色を眺める優雅な時間など与えてもらえず、どんどん歩いていく。
気付いたら坂の頂上を越えていた。そのまま下りに入る。こうなったら行くとこまで行くしかない。
前に進むと覚悟を決めた気配を察してちびも安心したのかようやく抱っこされた。
しばらくしたら頭を僕の肩にのせてすやすや眠りはじめた。
僕はそのままゆっくりばしゃやまを通り過ぎ、ようやく夢紅へたどりついた。もうへとへとだった。
お客様でにぎわう店内を見ながら、うちも日曜の忙しい時間のはずなのに、なんでここにいるのかよくわからないまま紅さんに冷たい水を一杯もらい、一息ついた後、夢元さんに車で送ってもらった。
ちょっと面白いと思うとつい試してみたくなる。僕は単純にちびがどこまで歩くのか興味があったのだ。
お腹もすいたろうし、喉も渇いたろうし、なのにちびは前に歩くことだけに集中してた。
自分の足で移動できるのが本当に楽しかったんだろうなぁ。
手をつないで歩く僕らの横を車やバイクがびゅんびゅん通り過ぎて行った。
あれが車じゃなくてうさぎやカメならもっと楽しいのに。
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2013 02 02

気がつけばいつの間にか1月は終わり2月に入っている。
島でも一番寒い時期が過ぎると節分が来て春がやってくる。
夜があったかいと感じるようになってきた。
先日の休みはお金の清算をした。
細かな凹がなくなってすっきりした。
と言っても大きな凹はまだ何年も残っているので完全にフラットになるわけではないが。
この日は何も用事が無いわけではなく、ひとつずつ淡々と片づけていったが
振り返ってみるとこの日会ったのは僕にとって大切な人ばかり。
翌日の朝、犬と二人の時間。
掃除機をかけた後、洗濯ものを干す間のBGMのためにレコードをかけた。
30年以上前高校生だった頃に毎日のように聴いていたアルバム。
何も変わらない。
2013年の僕もあの頃と同じようにただ幸せに生きている。