なんで毎年期待しちゃうんだろうな。
もしかしたら・・・・なんて。
いつもと変わらぬ一日なんだから、さっさとあきらめてまっすぐ帰ればいいのに、
用もないのに積屋の前でたむろして、楠田書店で立ち読みしたり、セントラル楽器でレコード物色したり、いつものもてないメンバーでうろちょろしても奇跡はおこらない。
案の定、寂しい気持ちで家に帰る。
クリスマスのケーキみたいにその日に食べなきゃってことはないんだけど
無性にチョコが食べたくなった。
仕方ない、自分で買うかと家の近くの小さな店に寄った。
レジの向こうに同じクラスの女の子が立っていた。
一瞬、なんでいるの?って思ったけれど、ここ彼女の家だ。
なんとなく恰好悪いからチョコじゃなくコーラをもってった。
100円払って店を出たら
その子が追いかけてきて「はい、今日バレンタインだから」ってチョコを一枚くれた。
びっくりして何も言えずにいたら「義理だからね」って笑って店に戻っていった。
それは何でもない一個100円のいつも食べてたチョコだったけれど、ものすごく美味かった。
それ以来自分で買うのをやめた。
これはもらって食べるものだと心に決めたからだ。
で、そのまま二度ともらうことなく32年が過ぎた。
※あくまでもフィクションであり、実在の人物、お店とは一切関係ありません。