miracle

鹿児島から一人で飛行機に乗って甥っ子(妹の子供)がやってきた。一つ下の弟が喉の手術を受けることになり、ママが付きっきりになってしまうので、その間、奄美のばーばがあずかることになったのだ。三日目の今日、ば-ばとずっと二人では退屈だろうと名瀬から笠利の僕のところへよんだ。店に入るなり、鹿児島弁で
「ねぇ、今日は何人お客さん来たの?」と聞いてくる。
「うーんと3人かな」正確にはパパ、ママ、子供ちゃんのひと家族だ。
「どうしてそんなこと聞くの?」
「だってこんな目立たないとこに誰も来ないでしょ?」とニヤリ。
「ばーばたちのお店(和風茶屋こっち)のほうがいっぱいお客さんいたよ」とクスクス。
「もっと目立つように看板ださなきゃ!」
「前のお店やガソリンスタンドの人に紹介してもらったらいいんじゃない?」
「ホームページとかやってる?」
「常連さんとかいるの?」
小学5年生、10歳の経営コンサルタントだ。
「あんまりさーお客さん来ると大変じゃない?ね、オレ一人だし。だからぼちぼち来てくれるくらいがちょうどいいんだよ」と強がる。もちっとお客様にきていただかないと困るというのが正直なところ。あわてて話題を変えて
「たっくん、毎日ひまじゃない?何してるの?」
ばーばが代わりに答える。
「午前中は毎日勉強してるのよ。ちゃんと宿題やってるよねぇ」
「あらそう。偉いなぁ!オレなんてね・・」
「全然やらなかったんでしょ!いつも最後のほうで焦ってやってたってママが言ってたよ」とニヤニヤ。はいはい、よくご存じで。この間、店はちょっと休憩してみんなで一緒にたっくんのお土産のお菓子を食べながらお茶を飲んだりしていた。それからたっくんが海に行きたいといいいだしたので、おなかの大きい相棒にちょっとの間、店を見てもらい、ばーばと3人で出かけた。立神さまをくるりと一回りして帰る。そこからが奇蹟の始まり。次から次へとお客様がいらっしゃる。たまたまと言えばそうなのだろうが、それでも今日はちょっと異常だった。奇蹟の予兆はひとつだけあった。昨日の閉店後に少しレイアウトを変えた。鏡も移動した。するとそこに映る景色が変わった。覗き込むともうひとつ部屋があるように見える。僕はこれが気に入った。パラダイスにも同じように鏡の奥にもう一つ部屋があるように見える場所がある。ちょっと異次元の入り口のようで面白い。けさ、鏡を磨いていたら、若い女の子が二人店の前を笑いながら通るのが見えた。珍しいなと振り返ってみると畑に向かういつものおばあちゃん二人だった。本当だって!ね?信じないよねぇ。だからいつも不思議なことがあっても誰にも話さない。たっくん、でも今日はいい一日だったよ。本当に素敵なお客様がたくさんいらしたんだ。うちの店が忙しいところ、見せてあげたかったなぁ。たっくんのおかげかも。明日も来る?