作者も内容も全く知らないで借りてきた本で映画のタイトルがついた短編のそれぞれの登場人物が実は同じ映画を同じ場所で観ているという形でひとつのまとまった話になっている。
僕自身、映画館を回って好きな映画をみることができなくなってからだいぶ経つ。たまにレンタルビデオやTVで観たりしているが本来、映画は映画館で観るものだ。今回僕がタイトルに惹かれて借りてきた本は、映画の役割、大げさに聞こえるかもしれないけれど人の人生に映画がどれだけ大きく影響しているかを改めて教えてくれた気がする。世の中普通に生きているだけでもいろんなことが起きる。自分の物語だけで大変かもしれない。でも映画の魅力は、たとえそれが作られたものであっても一瞬その世界に入り込むことで自分以外の人間の物語を体験できることだと思う。それは本を読むことでも可能なんだけれど、でもあの大きなスクリーンから目や耳を通して伝わってくるものは現実の世界の数倍も迫力があり、例えばジョーズなんて本当に自分が海に浮かんでいて回りにあんなでかいサメがいることを活字で読んだって怖くないが映画館はそのまま海に変わる。トップガンだって戦闘機に自分が乗ることは100%一生ありえないのにトムクルーズと一緒にギリギリの曲芸をやってみたりする・・とそんな派手な映画じゃなくても心に残る映画はたくさんあり、この本は読み進んでいくうちにいろんな映画を思い出させ、ひとつひとつの話はその映画以上に魅力的で、これをまたさらに映画化するとしたら大変だろうけど是非観てみたいと思った。
『映画篇』金城一紀 いっぺんにファンになってしまった。置いてあった笠利の図書室に感謝。(本は誰がどうやって選んでいるのか今度聞いてみたい)
そしてこれはちゃんと買うつもり。