グレ

前回の出産はどこか僕らが知らないところでいつの間にか産み、そして2匹のチビを連れて遊びにきた。何回か場所を移動しながらもいつも近くでちょろちょろしていてグレが一生懸命チビたちの面倒を見ているのを感心してみていた。そしていつの間にかチビたちの姿が見えなくなり、グレだけが遊びに来るようになったとき、もう子離れしたのか、それとも誰かが子猫だけどこかに連れて行ってしまったのかいろいろ考えたが僕には分からず、ただグレが時折いつもの子猫を呼ぶ時のやさしい鳴き方でいつもチビたちが遊んでいた車の下を探す姿を見たとき、とてもかわいそうで痛ましかった。産んでどれくらい一緒にいるのか分からないがそれがもしかしたら本来の野生の猫の宿命なのかもしれないと思った。おとといの夜中の3時頃、雨がザーっと降ったとき、グレがテラスの窓のところで鳴いていて起こされた。いつもと明らかに違う鳴き声で出産が近いことを今回は教えてくれたみたいだった。
どこで産んだらいいか迷っているみたいで家の中に入っても落ち着かずそわそわしており、僕はそのまま一緒に外に出てあらかじめ用意しておいたダンボールの中に新聞紙をちぎったり丸めたりしたものを入れたお産箱のところまで連れて行った。グレは素直にそこに入り、しばらくニャーニャー鳴いていた。不安だから一緒にいてと言われてるみたいでなんだかお産に立ち会う父親のような妙な気分で少しの間じっとそばに座っていた。
やがて静かになったので一度部屋に戻り、外が明るくなった頃に相棒が様子を見に行くと、「いたよ、小さな黒い耳が見えた」と喜んで戻ってきた。そのときはまだ何匹産んだのか、まだ出産は続くのかも分からなかったが、昼間、僕が食事のために家に戻ったときもちょうどグレは箱から出てきてさっとトイレだけ済ませて戻っていったり、夜もご飯だけ食べてすぐ子猫のとこに戻っていった。またちゃんと母親になれたみたいだ。
気がつくとグレはいつの間にか僕らとすっかり仲良くなっていて、いつもそばにいる。僕にとって初めてできた猫の友達。
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