梅雨入りした奄美は月火と嵐のような雨。雷もごろごろぴかぴかと激しかった。
ところが昨日の休みはうって変わって快晴で今日も引き続き晴れ。
休みの日に晴れるのは嬉しいがやはり営業日に雨だとお客様の足が遠のく感じで暇を覚悟する。(基本的に忙しい事はないのですが)
今日は朝から荷物が届いたので検品して店に並べる。今の時期でも週に2,3回の納品があります。ずっと待っていた商品で僕が海の近くに店を移したときに一番並べたかったもの。どんなに年をとっても洋服を着ることに楽しみが無くなったらさびしい。人に見せるというよりも自分が着ていて楽しくなる気持ちのいい服を僕はずっと探していた。葉山のS+Cの店に初めていった時の感動は忘れない。そこに置いてある服たちは本当に明るく清潔で、さわやかな風を感じるような、そしてとても綺麗なものだった。自分に似合いそうとかではなく似合うようになりたいと思わせる服だった。海のそばで肩の力を抜き、のんびり自然体で暮らす。それは夢のようにずっと思い描いてきたことで、それが現実には叶わなくてもその服は着るだけでもその気分を充分満たしてくれそうだった。
海のそばで気持ちいい服を並べる。そしてまた誰かとその心地よさを分け合えるのが今の僕の仕事。
ただただ見守るばかり
5時半に目が覚めた。猫の鳴き声で。(すみません、また猫の話です)初めてチビクロを見つけたのが去年の10月。夜、子猫の鳴き声が聞こえたので家の周りを探してみたらクーラーの室外機の下に小さな黒猫がいた。目だけが黄色く光っていた。親猫からはぐれたのか、ちょっとおびえている様子だった。後ろからそっと抱きかかえたが一瞬のうちに飛び降りてぴょんぴょんと飛び跳ねるように逃げていった。
その日は夜中ずっと鳴いていて窓からのぞくと塀の上で空に向かって親をよんでいるみたいだった。何日かしてこの猫が親かもしれないと思ったのがグレコで、ある日チビクロがグレコの後をくっついて歩いているのをみて、あぁやっぱりそうなんだと安心した。
それからグレコはしょっちゅうテラスに現れるようになったがチビクロは見かけない。もう大きくなって別行動なんだと思っている。
姿ももうチビではないだろうし、たまに遠くのほうに黒い猫をみつけるからあれがそうなんだと思う。
グレコは最初の頃はいつも縁の下に隠れていてなかなか出てこなかった。たまに顔を出してもカーッと口を三角にあけて威嚇するし、エサもお茶碗からサッとくわえてもっていき離れたところで食べていた。
それを繰り返すうち、いつの間にか慣れてエサを堂々ともらいにくるようになった。体に触れるのも絶対に無理そうだったのに今では平気で抱っこされる。いなくなった三日間、僕らが想像してたのはきっと子供を産んでたんだろうという事。少しすっきり細くなったし何よりもおっぱいがでろーんと伸びて目立っていた。でも、だとしたら子猫は何処にいるんだろうといつも気になっていた。ちゃんと面倒みてるのだろうか、もしかしたら産みっぱなしで知らんふりしてるのではと疑ったりした。
そして昨日の夜、7時でもまだ明るいが閉店時間なのでシャッターを下ろそうと店の裏に支柱をとりに行ったとき、海に続く道の真ん中にグレコがいた。そばに小さく黒いのが2匹チョロチョロしてる。おっぱいを飲んでるみたいだ。グレコはまっすぐこっちをみてる。
僕はあわててテラスにあがり、台所にいる相棒を呼んだ。
二人でテラスからじっと見つめた。そんなとこで車が来たらあぶないよって心配してたらグレコがゆっくりと草むらのなかに子猫をおうように移動した。ちゃんと母親してたんだと安心して、それから
昨夜も雨の中、体を濡らし夜遅くにご飯を貰いに来た姿を思い出し、なんだかいじらしくなった。
今朝もなんでこんなに早く来たんだろうと眠い目をこすりながらご飯をあげる。
「お前、ちゃんと母親してるんだねぇ」となでているとふと何かの音を気にするように耳を動かしていた。僕も遠くで猫の鳴き声を聞いた気がした。ゆっくりと家の裏のほうに歩いていくのでついていくとカーッと威嚇された。いったん知らんふりをしてひっこみ、後からそーっと裏をのぞくといた!黒い子猫が2匹、室外機の下から出てきた。グレコが引っ張りだしておっぱいをあげている。感動して僕はまた釘付けになった。
そしてさっきから僕は家の裏とテラスを行ったり来たり。グレコも同じように行ったり来たり。たった今も。雨が降っては大丈夫か?と声をかけに行く。そのたびにグレコはそれ以上は近寄らないでと目で威嚇するのだが、またしばらくするとにゃあとテラスへ顔を出す。
僕が子猫を連れて行かないように警戒しているのかも。
霧の夜
午前中は少し蒸すような暑さだったのに山のほうは全体に白いモヤがかかりそこから吹いてくる風はひんやりと肌寒いくらいだった。そのモヤがどんどん近づいてきてとうとう夕方から店や自宅もすっぽりと霧に包まれた。マイナスイオンを浴びまくる感じ。夜ごみを出すために外に出たら遠くのほうの灯りが霧で滲んで空全体にオレンジ色が広がっていた。本当に細かいミストシャワーのなか時折ボタッと大きな雫が落ちてきた。霧の中、車のいない道路でハナグロがのんびりくつろいでいる。近づいてもまったくおびえずじっとこっちをみている。いきなり人間の言葉で話しかけられたとしても驚かないくらい半分夢の中のような幻想的なシーンだった。
風に乗る音
予報ではもう入梅している頃なのに今日は朝から高い所に細長く薄い雲が浮かぶだけの気持ちのいい青空。長袖のシャツを着てちょうどいいくらいの適当な湿度のさわやかさだ。まだクーラーも必要ない。店内のライトもお客様のいない時間は消すようにしてなるべく涼しく過ごす。日向にいるとちょっと暑そうだが店の横は木陰にいるようで気持ちいい。いつか木の床を張ってもっとくつろげる(お客様にも)場所にしたい。朝、看板を出すときに道路を渡るがちょうど丘の上になっていて遠くまで見渡せ、たまに真ん中に立ったときに右にも左にも車が一台も見えないときがある。商売をしているのだから通りはにぎやかなほうがいいのかもしれないが僕は反対に嬉しくなってしまう。本当に静かで聞こえてくるのは波の音(時にはごぉーっと鳴るような潮騒)と鳥のさえずりだけ。
同じ星で生きている
昨日はGW明けの最初の僕らのお休み。
GWも平日も忙しさ(暇さ)は変わりないのだがなんだかちょっと気が張っていたせいか終わって少しほっとした感じ。天気予報は月曜から木曜までずらっと晴れマークが並んでいる。そろそろ梅雨入りするのでその前に植物なども太陽をいっぱい浴びる感じだ。部屋の掃除の手伝いをして、スーパーまで食料品の買出しに付き合い、そしてそのまま公民館の図書室へ本を返しにいった。ちょうどお昼休みで借りることはできず残念。そして午後はぼさぼさに伸びた髪を切ってもらった。昔から髪を切ってもらった後はいつも頭がボーッとして放心状態になる。本当にリラックスできる。お客様を迎える立場としてちょっと忘れてた大事な事を思い出させてもらった。買い物だって気持ちよくできるのが一番だ。
夜ご飯を食べたあとテラスにでたら星がいっぱいでてた。すぐにシマ吉とグレコが一緒に遊びにやってきた。シマ吉の左の前足からは出血の跡があった。おとといもびっこをひきながら歩いていたし、首筋に大きな傷を負っていたこともある。グレコもいつも体中に葉っぱやら何かの種などをくっつけているし、本当に毎日がサバイバルなんだと思う。ご飯を食べて少しごろごろとのんびりしてる姿をみてずっとここにいたらいいのにと思うがまたいつものように道路を渡って草むらのなかに消えていった。
どこで寝てるのかしらないが今日は満天の星空が気持ちいいよねぇと、本当に僕の頭の中は最近猫のことばかり。
時間の概念
今日から5月。雲は多いが適当に穏やかな日差しが気持ちいい。
前にも書いたが一週間や一ヶ月のサイクルが異常に早く感じる。
忙しくてあっという間ではなく全くその逆なのだけどあまりに変化の無い日々を過ごしているからだろうか、毎日が凪ぎ状態で平和だ。自分のテリトリーから動かずにいるとそこだけ時が止まり、気付くといろんなことが過ぎ去った後で時間の経過に気が付く。本当に浦島太郎になったみたいに。
その時間の経過が一度だけ逆転したときがあった。
近所のノラのうち、シマ吉よりももっと頻繁にご飯を食べにくるグレコ(顔が異常に小さいわりに下半身はぽってりして色もグレーっぽいからイタチみたいでちょっと意地悪な感じだからぐれた猫でグレコと呼んでいる)がある日ぱたっと姿を見せなくなった。ほぼ毎日来てたのが急に来なくなるとものすごく心配なものでもしや交通事故かと近所を探してみたりした。
結局、四日後に何事もなく現れたのだが、そのときは空白の三日間が一ヶ月くらいに長く感じた。それだけ平和で暇ってことなんだけど・・・。
今日もやわらかな太陽の下で、あきらかに僕よりも行動範囲の広い猫と一緒にのんびりご飯を食べるGWの間のあきれるほど平和な一日。