靴どろぼう

朝早く母からの電話。
声の調子から何かトラブルの予感。
「あの靴なんだけど、あんたたち来たときに持ってってないよね?」
僕が用事のついでに留守中に持って帰って磨いてくれたりしてないか、
そうであったらいいのにと本人いわく一縷の望みで電話してきたらしい。
残念ながらそうじゃない。
やっぱり盗まれたんだと落胆しているのがはっきり伝わってきた。
南の島の家々はもともとが開放的で鍵をかける習慣もあまりないが
実家は市営住宅で作りそのものが開放的。
玄関のそとに小さなアプローチがあって門がある。鍵もかかるけれど
手を伸ばせば外から簡単に外せるからあまり意味がない。
弟が言うにはこれで2回目らしいが、腹が立つのはなんで靴なんか盗むのかということ。
わざわざ人が履いたもの、サイズが合うかどうかわからないものを持っていくのがわからない。
盗まれても平気なものなど何もないがこの靴は特別な靴。
それを狙って盗んだとは思いたくない。きっと知らずに持ってったのだろう。
僕が贈ったからだけではなく母は本当に気に入ってくれてたみたいだ。
そのあと妹の分としてもう一足お店に買いにきてくれた。
この靴は誰がどこで買っても同じ値段。ずっと色や形を迷ってようやく決心したり、
お金が貯まるまで我慢したり、入荷を2,3ヶ月お待ちいただいたことも・・
そうやって手に入れた靴はそれぞれ持ち主の大切な想いがつまっている。
島にも悪いやつがいるなぁでは済まされない。