冬の記憶

子供の頃、冬はすすきの生い茂った山の中を走り回った。
まだまだ空き地がたくさんあって建築資材などが
無造作に置いてあったから
適当な板を組み立てて勝手に家を作ったりした。
秘密基地みたいなものでわざわざ宿題を持ってきてそこでやったり、
お菓子を隠したりした。
釘も打たずにただ板を重ねただけなので簡単に壊れてしまうのだけど、
なんとなく、風をよけて小さなところで隠れているのが
すごくどきどきして楽しかった。
学校が私服だったからランドセルだけ玄関に放り投げてそのまま
遊びに行く。下は一年中半ズボンで上だけシャツの上にセーターを着ていた。
ほとんどが手編みのセーターだ。
南の島でもちゃんと冬は寒く風は冷たかった。
マフラーを巻いた記憶はあんまり無いけれど、
首のまわりや袖口にあったかなセーターのちくちく感を覚えている。
セーターの匂いは独特でそれは手編みでも売っているものでも同じ。
冬の匂いがする。
一番の贅沢はかくれんぼしながらポケットから赤い包み紙のミルク
チョコレートを引っ張り出してかじることだった。
当時から100円でかなり贅沢なおやつだった気がする。
これも夏にはできない冬だけの楽しみだ。